今回は、現役高校生で江戸時代の古文書を解読し、実際に論文も発表されている愛知県・南山国際高校の秀 丈瑠さんに、編集長のジョン・スミスがインタビューさせていただきました。
前編では秀さんの幼少期のエピソードから古文書との出会い、論文を書くにあたっての苦労や古文書の扱い方についてお聞きします。後編では古文書の面白いエピソードや秀さんが尊敬する人物、将来の夢に、今の歴史教育について思うこと、そして歴史の面白さについてお聞きします。
是非、最後までお読み下さい。
秀 丈瑠さんのプロフィール
2003年愛知県生まれ。上海のアメリカンスクールを卒業後、南山国際中学校に編入。現在、南山国際高校に在籍。古文書の解読に挑戦し地方歴史学会に所属する。昨年、「全国高校生歴史フォーラム」にて研究論文が入賞する。現在の研究分野は近世史(江戸時代)。
まずはじめに
古文書とは近世以前(江戸時代)に主に草書体(くずし字)で書かれた文書のことを指します。草書体で書かれているため、独自の解読技術が必要で、古文書学という学問も存在します。歴史の史料となる古い記録で古文書の中にも様々な種類があります。
インタビュー
なぜ歴史の研究を始めたのか?
幼少期から始まった歴史愛
ジョン: 秀さんが初めて歴史に興味を持ったのは何歳ごろだったのでしょうか?
秀: 私が歴史に興味を持ったのは3歳頃ですね。最初は「家紋」に興味を持ちました。お墓参りや墓地に行かれたことがある方はご存知だと思いますが、墓石に彫ってある家の”シンボルマーク”に心を惹かれたんです。私の両親はお墓参りに行くたびに私が他家のお墓に”家紋ウォッチング”へ行ったきり、しばらく戻って来ないのでいつも頭を悩ましていたようです。今でも女の子とのデートより墓地へ”家紋ウォッチング”に行く方が楽しいのですが(笑)
ジョン:”家紋ウォッチング”面白そうですね。私も墓参りに行ったらやってみようかな? ”家紋ウォッチング”での家紋の見方や楽しみ方はあるんですか?
秀:見方としては多種多様な家紋の図柄を楽しむということもできますが、私の場合は苗字と家紋を照らし合わせて地域性を研究したり、著名な氏族の一族かどうかを調べたり、家紋から家系やその家の歴史を推測したりしています。墓地へ行くと本当に多種多様な家紋があって興奮しますね。傍から見たらただの不審者ですが(笑)
ジョン:「家紋」からそこまで深い歴史がわかるんですね。私の家の家紋も秀さんが見たら瞬時に地域や氏族を特定できるのかな?話は変わりますが、その後はどのように今の様な古文書オタクになったのですか? つい、オタクと言ってしまいました(笑)
秀:大丈夫ですよ。自分でも「オタク」を越して「変態」だと思っているので(笑)
幼稚園の頃は家紋に興味を持っていましたが、小学校に入ると時代劇や大河ドラマにハマりだしました。
あらゆる時代劇や大河ドラマの虜になって、挙句の果てには祖母に「甚兵衛」や「ちゃんちゃんこ」から仕立て直してもらった衣装を着て、父に厚紙で作ってもらった鬼平犯科帳ばりの陣笠をかぶって、腰には刀のレプリカを刺して「神妙にせい!」と叫んで走り回る始末だったので、家族から「若年寄」などと呼ばれていました。
ジョン:確かに言動がおじいちゃんですね(笑)
秀:そうですね。今でも高校では言動がおじいちゃんです。話し相手も年配の先生方ばっかりですしね(笑)
話は戻りますが、小学校高学年になると実存した「戦国武将」に興味を持ち始めました。それからというもの休日になると家族に頼み込んで東へ西へ、戦国武将ゆかりの地や城へ連れて行ってもらって、家族そっちのけで一人、資料館の学芸員を質問攻めにするとか、この頃から歴史オタクの片鱗が見え隠れしていたのかも知れません。
ジョン:学芸員を質問攻めにするの楽しいですよね(笑) めっちゃわかります。
秀:もう、質問しているときはアドレナリン全開でしょうね(笑)
家系図制作と先祖研究
ジョン:そうですね(笑)
秀さんは海外に住んでいた経験がありますが、そこではどうだったのでしょうか?
秀:私は父の仕事の都合で中国の上海に居ましたが、歴史に対する熱い思いは日本にいた頃と全く変わりませんでした。日本に一時帰国すると必ず歴史の本を何冊も購入してましたね。図書館にも必ず行って本を読み漁っていました(笑)。
この頃から自身の家系への興味が湧いてきました。
ジョン:まさに歴史オタクですね(笑) 自身の家系に興味を持ったとはどういうことですか?
秀:私の先祖は偶然、武士でしてね。九州地方のある藩に仕えていたお侍さんだったんです。江戸時代初期に御役御免になってしまうのですが(笑)
母方や親戚も調べてみると、これまた偶然、武士の家系で。それで興味を持って巨大な家系図を中学校の卒業プロジェクトで作ったんです。
ジョン:そうなんですね。先祖も武士でご自身も幼少期は武士をまねていたなんて、本当に偶然ですね。ところで、家系図はどのようにして作られたんですか?
秀:まず家族や親戚から話を聞きました。そこから、お寺や役所、資料館や図書館に行き山ほど資料を集めて整理をしました。役所では戸籍謄本を取れますし、資料館では藩の名簿である「分限帳」を見ることもできます。そして親戚から沢山の古文書などの史料をもらいました。このとき、初めて私は古文書を本格的に研究し始めたんです。
ジョン:この家系図制作が秀さんの古文書ハンターへの第一歩だったんですね。初めての古文書はどうでしたか?
秀:初めての古文書ですか。全くもって何が書かれているのか、さっぱりでしたよ。虫が這ったような字が永遠と書き綴られていて意味がわかりませんでした。正に”ヘブライ文字”を読んでいる感覚ですね(笑)
ですが、古文書解読辞典や翻刻文を片手に照らし合わせて読んでいると、少しずつですが、解るようになっていきました。先祖が何をしていたのか、どういう文書なのかが少しずつ解ってきて興奮しましたね(笑)
(※翻刻文とは、読みにくい古文書をテキストに書き起こして読みやすくしたもの。)
ジョン:”ヘブライ文字”を読む感覚ですか。私にはとうてい、読めなさそうです(笑)
論文を書くにあたっての苦労
ジョン:先程は秀さんの幼少期から古文書に出会うまでを話していただきましたが、次は論文を書くにあたっての苦労を教えて下さい。
秀:論文を書くにあたってまず、テーマを決めなければなりません。私の場合は自分の気になった分野をトコトン掘り下げて研究しています。私は江戸時代の火薬製造について研究しているので昨年、論文を発表しました。一つの論文を書くのに、時間と労力が必要なので高校生だと学業との両立が大変だと思います。
ジョン:論文の概要は一般の学者さんと同じなのですね。確かに、高校生だと学業との両立が大変ですね。ところで、「巨人の肩の上に乗る」という言葉がありますが、秀さんはこの行為についてどのように思われますか? (論文を書いていると膨大な先行研究を読まないといけないと思うのですが、面倒くさいと思ったことはありますか?)
秀:私は論文を書く上で必ず、その分野の先行研究を調べるようにしています。過去、出ているその分野の全ての研究論文を網羅するぐらい細かく調べていますが、全ての論文を探すことは難しいので自分ができる限りでやっています。このことは、歴史学者の磯田道史先生と以前、連絡を取らせていただいたときも同様に先行研究をチェックする重要性をアドバイスしていただきました。
古文書の扱い方について
ジョン:秀さんは古文書をたくさん管理されていると思いますが、それはどのようにされているのでしょうか?
秀:私は現在、百点以上の古文書を管理していますが、基本的にジップロックのような空気が入らない袋に保管しています。
その中に虫除けの為の、和紙に優しい防虫剤を一つ入れておくと、まず虫の被害はありません。古文書は湿気と虫が最大の敵と言っても過言ではないと私は思います。
そして重要なのは年に数回、陰干しすることです。古文書は梅雨の時期などを避けて「虫干し」という陰干しをした方が良いといわれています。私は年に3回ほど陰干しをしています。そのお陰か、湿気による被害も虫による被害もありません。
ジョン:古文書の管理にはある程度の配慮が必要なのですね。私も古文書を手に入れたらジップロックと虫干しを忘れないようにしないと(笑)
(後編に続く…)
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