【中学受験問題解説】 【必見】 都内進学校生が難関中学の算数の問題を徹底解説してみた 筑駒中・編

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世界一わかりやすい算数解説

堅い紹介

中学入試の解答解説は、様々な出版社が出していますが、大人の目線で書いているためわかりにくいことが多いです。お子さんの中にも、解答を読んでもわからない!などといって、問題を放り投げてしまう方も多いのではないでしょうか。それは勉強が嫌いになってしまう第一歩で、危険なサインです

そこで私は、現役生の目線から、背伸びをしない算数解説をしてみようと思い立ちました。お子さんも親御さんもリラックスして読めるようになっていますので、ぜひご一読くだされば幸いです。

ゆるい紹介

ここでは、中学入試に今の現役高校生が目を通して、いちばん難しそうだと思った問題を世界一わかりやすく解説していきます。算数が得意になるポイントもどんどんアップしていくから、ぜひ見てくださいね。

まず初めに、国立学校最難関と言われる、筑波大附属駒場中学入試2019年度の算数からこの一問!

「一筆書き」の問題です。実は、「一筆書き」の問題は、1700年代から数学者の議論の的になるような歴史のある問題です。では「一筆書き」の初歩的な例題を見ていきましょう。

ちょっと長くなるので、こんなの知ってるから早く解説してくれ!!っていう人は読み飛ばしていただいて結構です。

例題)Königsberg graph

18世紀の初め頃にプロイセン王国の東部、東プロイセンの首都であるケーニヒスベルク(現ロシア連邦カリーニングラード)という大きな町があった。この町の中央には、プレーゲル川という大きな川が流れており、右の図のような七つの橋が架けられていた。あるとき町の人が、次のように言った。
                                     
「このプレーゲル川に架かっている7つの橋を2度通らずに、全て渡って、元の所に帰ってくることができるか。ただし、どこから出発してもよい」
町の人が言ったことはできるだろうか。

(画像・問題文はhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E7%AD%86%E6%9B%B8%E3%81%8Dによる。)


この問題は新聞のコラムに乗ったり、ウィキペディアにも乗っている有名問題です。実際に解いたのは、有名な数学者レオンハルト・オイラーです。

この問題知らないって人は、ちょっと考えてみてください。初見で解くのはなかなか難しいと思いますよ。

ヒントは、次の図です。

わかりましたか?

ではこの問題の解答です。

先ほどのヒントの図は、点が陸地、線が橋を表現しています。この問題は、上の図が一筆書きできるのかどうかということと同じだとわかります。実は、すべての橋を通って元の陸地に帰ってくるには、すべての陸地において、そこにかかっている橋が偶数本でなければならないのです。

理由を説明しましょう。

まず、出発点ではない陸地を考えます。 

もし、すべての橋を渡り切って元の陸地に戻れたと仮定すると、出発点ではない陸地の上を何回か通ったことになります。ということは、その陸地に「入場」して「退場」することを何回か繰り返したことになります。つまり、一回通った橋は崩れると仮定すると、一回その陸地の上を通るごとに2本の橋が崩れていきます。

ということは、かかっている橋が奇数本だったら、最後に陸地に「入場」したときに「退場」しようと思っても、すでにその陸地にかかっていた橋が全部が崩れてしまったという事態が発生します。つまり、出発点ではない陸地において、かかっている橋は全部偶数本になります。

次に、出発点兼終着点となる陸地を考えます。

実は、すべての陸地にかかっている「橋の数の合計」はいつも偶数になります。理由は簡単で、橋を一本架けるごとに「橋の端」の数は2ずつ増えていきます。

だから、橋が7本かかっている上の図では、すべての陸地にかかっている「橋の数の合計」は7×2=14本となります。実際足してみると、5+3+3+3=14となっていて偶数本です。よって、すべての「橋の数の合計」と、出発点以外の「橋の数の合計」がともに偶数なので、偶数-偶数=偶数より、出発点にかかる橋の本数も偶数だとわかります。よって、すべての陸地において、そこにかかっている橋が偶数本でなければならないことが示されました。 

よって、この問題の答えは、

「すべての橋を一本ずつ通って戻ってくることはできない」

でした。

ここで一つ疑問が浮かびます。「すべての陸地において、そこにかかっている橋が偶数本であるならば、必ず橋全部を一回ずつわたって元の陸地に戻ってこれるのか?」ということです。これは数学の世界で、「必要性と十分性」と呼ばれているもので、高校生でもよく間違える大事なポイントです。

「もしあなたが東京に住んでいるなら、あなたは日本に住んでいます。」は正しくても、「もしあなたが日本に住んでいるなら、あなたは東京に住んでいます。」は誤りです。

このように、「橋をもし一回ずつわたって元の陸地に戻ってこれるなら、すべての陸地においてそこにかかっている橋が偶数本」は正しくても、「もしすべての陸地においてかかっている橋が偶数本なら、橋を一回ずつわたって元の陸地に戻ってこれる」が正しいかどうかはまだわからないのです。

これの証明には時間がかかるので、次の記事で行おうと思います。

皆さんは、これを証明なしで使っても大丈夫ですよ。

では本題に戻りましょう。

今回の問題:2019年度筑駒中算数

こちらの問題です。今までの話を読み進めてきたあなたには、この問題はそれほど難しくはないはずです。

では(1)から行きましょう。手書き感満載の下図を使っていきます。

2019年度筑駒中算数解説:まずはウォーミングアップ

この図のAからスタートし、すべての橋(辺)を一回ずつ通ってAに戻ってくることはできるでしょうか?

これはできません。なぜなら、B,C,D,Fにかかる橋はすべて3本で、奇数だからです。

では、ここに辺を二本加えて、すべての点(陸地)にかかる辺(橋)を偶数にするにはどこにかければいいでしょうか?ただし、辺を加えるといっても、もちろん問題文にそぐわない“BとG”とかはだめですよ。

これは簡単です。辺を1本かけてほしい点が4つ、辺が2本なのだから、その点を2つずつ結べばよいのです。答えは、イとケ、オとカの2通りです。

2019年度筑駒中算数解説: いよいよ場合分けの登場

今回は、この図のAからスタートし、すべての橋(辺)を一回ずつ通ってAに戻ってくることはできるでしょうか?

もうお分かりですね?これもできません。なぜなら、B,D,F,Hにかかる橋はすべて3本で、奇数だからです。

では、先ほどと同じようにここに辺を4本加えて、すべての点(陸地)にかかる辺(橋)を偶数にするにはどこにかければいいでしょうか?今回はさっきほど簡単ではありません。

先ほどのように辺をかけてほしい点同士を結びたいのですがうまくいきません。

そこで、別の点を通過する、辺2本の橋を追加することを考えます。例えば上の図で、DとHを結びたいときには、DとEを結んで、EとHを結ぶことを考えます。すると、Eにつながる辺の本数は2つ増え、偶数であることは変わりません。一方DとHはつながる辺が1本ずつ増えるため、これでうまくDとHが結べました。

これ以降、このような「離れた2点を結ぶ」と言ったときには、辺を複数使って最短距離で2点を結んだ、と思ってください。

そこでまず、Bの隣の3点A,C,Eのうち、Bとどれを結ぶのかを考えます。

Bには最低1本の辺が追加されなければなりませんが、3本追加してしまうと、残りの辺をつないでほしい頂点3つが辺が足りなくて困ってしまいます。2本追加すると、Bにつながる辺の本数は奇数のままになってしまいます。よって、Bには辺が一本のみ追加されるとわかります。

(ⅰ)BとAを結ぶとき
Aにつながる辺の本数が奇数個になってしまったので、偶数にするために自動的にAとDも結ばれます。そして残った2点、FとHを結びます。結び方はF→I→Hか、F→E→Gの2通りです。よってこの場合の結び方は2通りとわかります。

(ⅱ)BとCを結ぶとき
この図は左右対称なので、結び方は1.と同じで2通りです。対称性を見つけると、計算量が圧倒的に減ることが多いので、対称性には常にアンテナを張っておいた方がいいですよ。

(ⅲ)BとEを結ぶとき
これはもう一回場合分けが必要です。
① EとHを結ぶとき
  残りの2点、DとFを結ぶにはD→E→Fしかなく、1通りです。
② EとHを結ばない時
  HはGまたはIとむすぶことになり、それぞれH→G→D,B→E→F
  またはH→I→F,B→E→Dと結ぶことになり、2通りです。

よってすべて足し合わせて、2+2+1+2=7通り、となります。

今回注意してほしいのは、やはり「数え漏れ・ダブり」です。それをなくすためには、まず「場合分けする時点での漏れ・ダブりをなくす」ことが先決です。

例えば上の場合分けで、もしBとA、BとCがともに結ばれるようなことが合ったら、この場合分けは成立しません。だから、それがないということを下線部で確認してから場合分けをしているのです。

場合分けは大学受験まで付きまとう厄介な存在です。今のうちに克服して、将来に備えましょう!

2019年度筑駒中算数解説: いよいよ複雑に。やることは同じです。

今回は、この図のAからスタートし、すべての橋(辺)を一回ずつ通ってAに戻ってくることはできるでしょうか?

もうさすがにしつこいですね。これもできません。なぜなら、B,C,E,H,J,Kにかかる橋はすべて3本で、奇数だからです。

では、先ほどと同じようにここに辺を5本加えて、すべての点(陸地)にかかる辺(橋)を偶数にするにはどこにかければいいでしょうか?

B,C,E,H,J,Kの各点につき、少なくとも1本の辺を足さなければなりません。しかし、辺は5本しかないので、1本の辺でこの内の2点を結ぶものが必ず1つ以上あるとわかります。今回はこれを元に場合分けしてみましょう。

(ⅰ)BとC, JとKをともに結ぶとき
EとHを結ばなければならないので、E→F→G→Hと結ぶことになり、1通りです。

(ⅱ)BとCを結び、JとKは結ばないとき
EとK、JとHを結ぼうとすると、最低でも5本の辺が必要であることが簡単な実験で分かります。よって、EとJ、HとKを結ぶことになります。結び方は各2通りずつですね。よって、2×2=4通りになります。

(ⅲ)JとKを結び、BとCは結ばないとき
この図は上下対称なので、この場合は2.と同じで4通りです。

よって、1+4+4=9通りあるとわかりました。

さて、ここでまだ疑問がある、なんて人はいませんか?

そう、「すべての橋を一回ずつ通って、結果別の陸地につくことはできるのか?」ということです。

実はこれは、いままでの話をマスターしていれば、楽に理解することができます。

この状況が発生するのは、先ほどの状況で、橋をあと一本残していざ元の陸地に戻ろうとした時に、元の陸地に戻るはずだった橋が崩れ落ちた時に起こります。残りの橋はすべて通ったので、これで「すべての橋を一回ずつ通って、結果別の陸地につくこと」ができました。また、終着点と出発点の間には、橋が一本減りました。つまり、終着点と出発点にかかる橋の数は奇数本になりました。

よって、「すべての橋を一筆書きするには、各陸地において、橋の数がすべて偶数か、2つだけ奇数で他がすべて偶数であるかのどちらかである」ことが分かりましたね。

2019年度筑駒中算数解説: 今日のポイント

① すべての橋を通って元の陸地に帰ってくるには、すべての陸地において、そこにかかっている橋が偶数本でなければならない

② すべての橋を一筆書きするには、各陸地において、橋の数がすべて偶数か、2つだけ奇数で他がすべて偶数であるかのどちらかである

③ 「場合分けする時点での漏れ・ダブり」をなくす

④ 対称性には常にアンテナを張る


この問題は、通常の一筆書き問題…(*)とは異なり、「一筆書きの可能性(その図形は一筆書きできるか)」についての高級な知識を問う問題です。その分、場合分けは簡単で、答えは数え上げでも解けるような小さい数になっています。

私が中学受験をしていたころはこのような斬新な問題には出会いませんでした。近年、中学に入ってから学ぶような高級な知識があると簡単に解ける問題も増えてきていて、この記事でも、そんな「中学受験で役立つ高級な知識」も続々紹介していきたいと思います。

(*)通常の一筆書き問題(有名問題:難)

この団子状の図形を左端からスタートして、すべての線を通って右端にたどり着く場合の数は何通りあるか。

(略解)

団子をいくつずつ書き上げていくかで考える。例えば、(1,2,1)という書き方は、初めに左端の団子をすべて書き上げ、次に真ん中の二つの団子に同時に取り掛かり、書き上げてから最後の団子を書く、という場合に対応する。各場合ごとに書き方は、各団子ごとに3本の辺を並べ替えればよいので、(3×2×1)^4=1296通りあり、書き方は団子と団子の間に「仕切り」を入れるかどうかを3つの間ごとに選ぶので2^3=8通り。よって、1296×8=10368通りとわかる。

略解をヒントに自分でもどういうことか考えてみてくださいね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

この記事を書いたライター

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