一昔前まで、中高生が敬語について神経質になる必要はありませんでした。日々メールや文章を書いている社会人と違って、目上の人と話すときも基本的に口頭だったからです。
ところが、昨今のスマートフォンなど電子デバイスの普及によって、中高生も敬語を交えた文章を書く必要が出てきました。
しかし、多くの中高生にとって、敬語は文法として習ってはいても上手く使うことは難しいものです。
そこで、そもそも敬語の3種類ってなんだっけ?話すのは簡単だけどいざ書くとなると難しい、どこまでかしこまった表現にすればいいか分からない、といった人に向けて、今日から使える中高生の敬語術をお伝えします。
基礎知識を付けよう
まず復習になりますが、敬語には「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」があります。
・尊敬語
相手を上げる表現です。「おっしゃる」「いらっしゃる」などがなじみ深いですね。
・謙譲語
自分を下げる(へりくだる)表現です。「いただく」「うかがう」、すこしかしこまったものでいくと「拝聴する」なんてものもあります。
・丁寧語
その名の通り、丁寧な表現です。「です/ます」や「お茶」など、一番日常的に使っているものですね。
中高生の敬語
社会人になると、ほぼ完璧に敬語を使うことが求められます。本屋さんにある「新社会人が覚えるべき敬語100選」みたいな本の多さからその重要性が分かるでしょう。
しかし、中高生は完璧な敬語を使うために必死になって勉強する必要はありません。例えば「御社」や「弊社」といった言葉は有名ですが、別の学校の人に対して「御校」「弊校」と言っている人に出会ったことはありません。
これは人にもよりますが、私は丁寧語と、5割ぐらいの尊敬語、2割くらいの謙譲語が意識することができれば充分礼儀正しいと思います。
代表的な敬語
結構少ないです。正直なところ、丁寧語を意識できればそうそう変な印象はもたれません。
・です/ます
例:「え、私が今日の日直なんですか?」
基本のキですが、うっかり忘れることが多いので注意しましょう
・すみません
例:「宿題の提出が遅れてしまってすみません」
ごめんなさいより丁寧な印象ですね。「申し訳ありません」だと少し距離を感じてしまうので、やめてくれという先生がたまにいます。
・~してくださる
例:「相談に乗ってくださってありがとうございます」
尊敬語です。先生や先輩が自分にしてくれたことにつけて使いましょう。
よくある間違いに注意
よく、ため口で話す若者に「最近の若者は敬語も使えんのか!」と怒ってるシーンなんかがドラマなどでありますが、最近の中高生は「ため口」より「変に間違っているかしこまった喋り方」の人の方が多い気がします。ついつい知ってる表現や漢字を使いたくなりますが、実は間違ってしまっていることも。しっかりとした知識を身に付けてから使いましょう。
ここでは敬語に関する間違いの他にも、日常的にかしこまった話し方・書き方をするときに間違えやすい表現をまとめました。それぞれで1つ記事が書けるぐらい奥が深いテーマなので、気になった方はぜひ調べてみてください。
×参考になります
先生や先輩から何か教えてもらったとき、「ありがとうございます。参考になりました!」と言う人は多いですが、これは実は少し失礼です。「参考にする」には「判断材料の一つにする」という意味があるので、「勉強になりました」と言うのがいいでしょう。
誰かにアドバイスするときに「ご参考になれば嬉しいです」と言ったりしますが、これも「自分の意見を判断材料の一つにでもしてください」とへりくだっている表現ですね。
×させていただく
文化庁が発表している「敬語の指針」によれば、「させていただく」の使い方は以下の通りです。
ア)相手側又は第三者の許可を受けて行う場合
イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合
の両方を満たす時に使われる。
つまり先生や先輩の許可も必要ないのに「~させていただきます」というのはあまりよろしくありません。
良くない例:「昨日提出させていただいた宿題なのですが……」
これは「提出した」で充分です。もう少し敬語要素を増やしたければ謙譲語をつけて「提出いたしました」が無難でしょう。
そして次で詳しく説明しますが、「させていただく」を「させて頂く」と書いてはいけません。
×「ください→下さい」, 「いただく→頂く」
これは基本的に誤用です。基本的にというのはあまりに間違えて使われすぎた結果許容されつつあるからです。ただ今でも気にする人は気にします。
どこが間違っているのかというと、「靴を脱いでください」はそのまま「靴を脱げ」を丁寧に言ったものなのですが、「靴を脱いで下さい」は「靴を脱いでそれをくれ」を丁寧に言ったものになります。急なおねだりに対応できる人は少ないと思うので、やめたほうがいいですよね。
「下さい・頂く」など、スマートフォンの予測変換で漢字が並んでいると使いたくなる気持ちは分かりますが、気を付けましょう。
ら抜き言葉
「見られる」を「見れる」、「食べられる」を「食べれる」というものを「ら抜き言葉」といいますが、これは誤用か誤用でないか微妙なラインです。
助動詞である「れる/られる」には可能・自発・尊敬・受身の4つの種類があります。「見る+られる」の「見られる」は「見ることができる(可能)・思われる(自発)・ご覧になる(尊敬)・誰かに見られる(受身)」の4つの意味として捉えられます。それが分かりにくいので可能の意味で使う場合は「見れる」としたのがら抜き言葉です。こっちの方が分かりやすそうですよね。
ただ、今のところ、フォーマルな場ではら抜き言葉は誤用となっていますので、場面を選ぶ必要がありそうです。
逆に注意すべきは必要もないのにらを足してしまうことです。ら抜き言葉にしないように気をつけすぎた結果、「飲める」を「飲められる」とか「飲めれる」と使ってしまうのは明らかな誤用です。気をつけましょう。
中高生はあまり使わない敬語
もちろん敬語としては合っているのですが、「え、これこの場では使わなくない?」といったものはそれなりにあります。場面を見極めましょう。
・かしこまりました, 承りました, 承知いたしました
学校で使ってる人はあまりいない印象です。「分かりました」で充分だと思います。
・申す, 申し上げる
後輩に言われたらびっくりしますね。謙譲語はあまり使わないので、「言う」で大丈夫です。先ほどの復習ですが、ここで「言わせていただいた」なんて言ってはいけません(あなたが発言のたびに誰かに許可を取らないといけない立場だったら別ですが)。
・過度な二字熟語の使用
「至急」「通達」「考慮」などの二字熟語は、スマートフォンの普及で漢字を書かなくても予測変換で出てくるので使いやすいですが、日常の会話の中で使いすぎてしまうと場違いな印象をもたれることがあるので、注意してください。
ビジネス敬語ではない難しさ
ここまで敬語の使い方や良くない例などについて書いてきましたが、正直に言うとそこまで気に病むことではないです。というのも完璧に敬語を使っている中高生なんてほとんどいないからです。
先生に対してため口で話してる人も多いですし、謙譲語と尊敬語をうっかり間違えて「さっき……先生が申し上げた……」なんて言ってしまう人もそこそこいます。
ただいざ敬語を使う必要が出てきた時、特にこのご時世、先生に質問のメールを送ったり先輩とLINEで話したりする時に、しっかりとした敬語を使える人はまず間違いなく良い印象をもたれます。勉強しておくに越したことはないでしょう。
そして中高生の敬語で一番難しいのは、ほどよく日常の喋り方と混ぜたほうがいいところです。「先日拝見いたしましたプリントなのですが」というより「この前読んだプリントなんですけど」と言った方が自然です。
こういった「中高生らしさ」を残さないといけない中高生の敬語は、社会人の敬語よりも完璧に使うのははるかに難しいでしょう。今後も少しずつ、具体的な使い方を交えて中高生の敬語についての記事を書いていけたらと思います。
あ、あとこんなこまごまと間違った敬語とかを書いているのですが、最近は色々な間違いが許容されつつあります。辞書編纂者の飯間浩明さんは「言葉は変化するもの」と言ったそうですが、新しい表現は誤用とも進化とも言えます。なので誰かの間違いについて、鬼の首を取ったかのように指摘するのは止めた方がいいでしょう、、笑
参考URL
文化庁・敬語の指針
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/sokai/sokai_6/pdf/keigo_tousin.pdf
NHK 仕事の流儀「辞書編纂者・飯間浩明」
https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2018089279SA000/
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