都内進学校校長ロングインタビュー 開成中/高 柳沢幸雄 #2「親は子供に「餌巻き」をしろ!」





[第二回]

都内進学校の校長先生に現役生がホンネを突撃インタビュー!
日本で最も東大への合格者数が多い開成学園柳沢幸雄校長です!

柳沢校長ロングインタビュー第二回では、今後到来するAI時代の展望と、その時代に必要な能力、そしてそんな子供を育てるための教育法についてお話を伺いました。
(第一回のページはこちらから)

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#1:グローバル化が喧伝されるのは、未来が輝いていない時代だから
#2:親は子供に「餌巻き」をしろ!
(★)
#3:AI時代だからこそ、開成は唾の飛ぶ距離の授業を大切にする

AIによって職は無くなるが、仕事は無くならない

―AI時代とはどんな時代になるのでしょうか。

AIという言葉は20世紀からありました。AIがどこまで進化するか、それによって社会がどう変わるかはわかりませんが、コンピューターによって職業が大きく変わってきたのは間違いありません。

実は、私が大学卒業後に最初に就いた仕事はシステムエンジニアでした。
私が大学を卒業した1970年頃というのはコンピューターが社会に本格的に影響を及ぼし始めた時代で、ちょうど私は富士銀行(現、みずほ銀行)でATMを作っていました。当時もコンピューターには夢があり、MIS(マネージメントインフォメーションシステム)という情報が集まれば誰でも経営が出来るといった概念が流行りましたが、結果としてはそうはなりませんでした。AIも、現在言われていることが全て実現するわけではないと思います。

「management information systems」の画像検索結果
人間はその登場の時期から、コンピューターの力に対する過信と失望を繰り返してきた

当時は電車に乗る際にキップに穴を開ける人がいましたが、自動改札機の登場によってそんな仕事は無くなってしまいました。

機械化によって従来の仕事が無くなる一方で、同時に新しい職業も生まれます。改札のキップを切る仕事は無くなってしまいましたが、今でも鉄道会社には仕事はあります。AIによって我々が慣れ親しんだ職業はなくなると思いますが、新しい職業も出てきます。仕事がなくなることはありません。

「新宿改札 切符切り」の画像検索結果
かつての新宿駅改札ではこのような切符切の人がいたことを信じられない人もいるかもしれない

―仕事は無くならないとはいえ、慣れ親しんだ仕事ではない仕事を選ぶことに不安があります。AI時代を見据えて、どうやって仕事を選ぶべきでしょうか。

自分の好きな仕事を作る/ 選ぶことが一番いいと思います。鉄道が好きな人は鉄道関連の仕事につけば、仕事が最初と変わっても楽しめるでしょう。

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―好きなことを見つけられない人もいます。

そんな人はやっぱり部活をやることが一番です。とりあえず、色んな部活に入ってみましょう。そこには知識が深い先輩がいます。その人達から学ぶことが大事です。その分野の知識も増えるし、自分の興味に触れるテーマが見つかるかもしれません。部活は自分の個性を知り、自分を知る上で役に立つと思っています。

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―個人の能力で言うと、AI時代に重要になってくる能力とは何でしょうか。

皆さんの生きる人生の中で、かならず大きな変化は訪れるでしょう。昔は仕事の中でも毛筆を上手く書ける人が尊重されましたが、今はタイピングが早い人の方が尊重されます。これはパソコンが社会に広く浸透したから起きた変化ですね。
AIによる変化は避けられないので、逆に社会の変化にアジャストしていく能力を身につけることが重要だと思います。

現役生徒にこれからの指針を語る柳沢校長

親は子供に「餌巻き」をしろ

―では、これからの時代を見据えて、開成学園は今、どのような教育を大事にしているのでしょうか。

開成学園は「授業」「部活動」「学校行事」の3つを重視しています。

まず、授業で伝えているのは、学び方を身につけることです。確かに、今学んでいる知識は十年後には陳腐化してしまい役に立たなくなるかもしれませんが、今ある知識を学ぶことには意味があるのです。それは、「学び方を学ぶ」ということです。

例えば、今学んでいるプログラミング言語は、将来、役に立たなくなっているかもしれません。しかし、知らないことを身につけることを経験していれば、新しいものが出てきた場合もそれに対応することが出来ます。そのため、「学び方を学ぶ」ことが出来るよう、授業で指導しています。

次に、部活動は個性を伸ばす場所と位置づけています。本人の好み次第で、何の部活に入ってもいい。好きなことは本人の個性ですからね。私はよく、始業式や終業式で、「自分の好きなことに関わる仕事に就くと、人生幸せだよね」といった話をします。

例えば電車が好きだったとします。もし、車掌になりたいと思っていても、何らかの理由でなることができなかった。それなら、車掌以外で電車に関わることをすればいいんです。今よりさらに走ることのできる電車や、デザイン、内部の機械に関わることなど。好きなことに対して、自分の能力がうまく合致する分野で仕事を選ぶ。自分は本当に何が好きなのか、何をしていると楽しいのかを、部活で見極めて欲しいと思っています。

最後の学校行事では、合意形成のプロセスを学んでもらいたいと思っています。例えば、開成の運動会は審判や下級生の指導も含めて全て生徒の手によって行われます。このプロセスにおいて、彼らは自分たち、下級生が納得して決めることの重要性、自らの主張を通す方法や多数の人の合意をまとめ上げていく方法も経験していくのです。

伝統ある学校行事のウラには、確かな教育の意図がある

―ここまで学校のことを中心に伺ってきましたが、これからの時代を見据えて親が家庭ですべきことは何でしょうか

親はいくつになっても子供に期待しています。そしていくになっても子供と関わりを持ち続けたいと思っています。しかし、親も最初は子供を支える立場だったのが、支えられる立場になり、老いては子に従うといった関係性にならざるを得ません。

そうした避けられない時の流れの中で、親子関係で一番楽しい時期というのは、親子がともに社会で活躍している時期です。この時期をなるべく長くするために必要なことが、子供を早く自分から追い出すことです。つまり、子供をいかに早く大人にすることが出来るかに懸かってきます。子供を早期に壁にぶつからせて、たくさんの経験をさせましょう。高校生から親元を離れて、寮で生活する生徒もいますが、あれは子供の成長に非常にいいでしょうね。

子供にとって親は、最初は超えられないうざったい存在ですが、その状態が早く終わるほどいいですね。大学受験は親が手助け出来る最後のイス取りゲームです。大学受験が終わったら、親は子供を完全に手放して下さいね(笑)

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―AI時代になっても、親がすべきことは変わらないのでしょうか。

技術が進歩しても人間は動物としては変わりません。人間の成長速度も同じく変わらないのです。昔も今も思春期は12~13歳。この時期に子供にいかに多様な経験をさせるかが親にとって大事になってきます。

子供が世の中に何があるのか知らないうちは、親は色んなものを子供に見せてあげてください。これを私は「餌巻き」と呼んでいます。興味がないところに連れて行っても反応はそっけないものですが、興味があるところに行くとカチッとハマるタイミングがあります。

開成学園は多分野に渡り、トップクラスの人材をたくさん輩出してきました。この学校にいると、色んな分野のトップクラスの人たちから、深くて面白い話を聞くことが出来ます。例えば、この前はマネックスの松本さんが講演に来て話をしていきましたが、その話に対する生徒の反応は様々でした。

但し、先程も述べたように、親は徐々に子供から引いていくことが肝要です。様々な選択肢を示して、その反応を観察する。興味がありそうなことが見つかれば、支援しつつもそっと見守る。これが美しいと僕は思いますね。

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#3:AI時代だからこそ、開成は唾の飛ぶ距離の授業を大切にする に続く!

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